日本の畜産業が直面する課題と食文化への影響

~世界で愛される和食を支える畜産業の岐路~

皆さんこんにちは。和食が大好きな本ブログの管理人です。今日は、インバウンドの増加で人気が急騰している和食のうち、特に人気の畜産物について書きますので、最後までお楽しみください。

はじめに 地域ごとの特性と未来への展望

日本の畜産業は、地域ごとに特性を活かしながら発展してきました。
畜産物別の産出額ランキングを見ても、地域ごとの生産の特徴が明確に現れています。
本記事では、畜産業の現状を解説するとともに、その課題と将来の展望について考察します。

まずは、手はじめに畜産物の産出額ランキングのご紹介です。
日本国内の畜産業の実態が現れていて面白いですよ。

日本の畜産産出額のトップ地域

それでは、令和4年度の畜産物別産出額を見ていきましょう。

肉用牛

  • 鹿児島県: 1,452億円
  • 宮崎県: 1,037億円
  • 北海道: 831億円

地方別でみると九州が全体の40%強を占めており、国内の肉用牛の多くは九州で生産されています。

有名な物でいえば宮崎牛や佐賀牛など一度は聞いたことがあるような高級肉などが生産されています。

乳用牛(生乳)

  • 北海道: 4,183億円
  • 栃木県: 471億円
  • 千葉県: 300億円

北海道は圧倒的なシェアを持ち、冷涼な気候と広大な牧草地を活かした大規模な酪農経営が特徴です。

  • 鹿児島県: 1,062億円
  • 宮崎県: 758億円
  • 千葉県: 751億円

南九州や関東地方では大規模養豚場が集中し、特に飼料の輸送コストの低減が生産効率を左右する重要な要素となっています。

採卵鶏

  • 茨城県: 1,031億円
  • 千葉県: 623億円
  • 鹿児島県: 511億円

関東地方は大消費地に近いため、特に茨城県と千葉県が強いシェアを持ち、大規模な養鶏場が集積しています。

ブロイラー

  • 宮崎県: 867億円
  • 鹿児島県: 644億円
  • 岩手県: 591億円

南九州と東北地方が強く、特にIT活用の保守管理運営システムの発達により効率的な大規模生産が行われています。
鳥肉のイメージとしてやはり地鶏が強いですが、産出額からもわかるように有名なはかた地とりや華味鳥やはかた1番どりなどは、やはり九州地方のブランド鳥肉になります。

国内ランキングからわかること

ここまで国内の産出額のランキングを紹介してきました。

このデータからみて具体的にどんなことがわかりましたか。

先程ランキングで紹介した地方別からみてみると圧倒的に日本国内の産出額の多くを占めているのは九州地方になります。

肉用牛に豚、鳥とどれも地方別で見たときに1位の産出額です。

普段はあまり意識しないかも知れませんが、確かに聞いたことがあるようなブランドの肉の中には九州地方の物が含まれているのではないでしょうか。

次に都道府県別でのランキングになりますが、1000億を超える産出額を出している都道府県は9県が該当しますが、地方別で入っている九州地方の鹿児島県、宮崎県と北海道はやはり高い産出額をだしています。

地方別と都道府県別でみたとしてもやはり大半を占めているのはこの3県です。

傾向として、産出額が高い都道府県では必ず有名な畜産物があり国内でも大きなウェイトを占めることができていることがわかります。

佐賀県も農業立国で佐賀牛や伊万里牛が有名ですが、絶対的な算出額では南九州には及びません。

同様に熊本県は国内有数に農業が盛んな地域ですが、こと畜産業に限るとなると鹿児島、宮崎県には
及びません。
それでも阿蘇の赤牛や天草の大王鶏は絶品です。

日本の畜産業が直面する課題

畜産業はインバウンドの和食人気のおかげで、地域特性を活かして発展しているものの、いくつかの課題に直面しています。

① 後継者不足と高齢化
  畜産農家の平均年齢が65歳を超える中、若手就農者の確保が難しくなっています。
 技術の継承が断絶するリスクもあり、早急な対策が必要です。

② 生産コストの上昇
 飼料価格の高騰、光熱費や人件費の上昇により、畜産経営が圧迫されています。
 特に飼料の輸入依存度が高いため、国際情勢による影響が大きいです。

③ 環境問題への対応
 温室効果ガス削減や糞尿処理、悪臭対策など、環境問題への対応も求められています。
 これにより、持続可能な生産システムの構築が急務となっています。

畜産業と食文化への影響

日本の食文化、とりわけ和牛や豚肉、地鶏を使った料理は、国内外で非常に高く評価されています。
TVやインターネットのニュースで盛んに取り上げられているので、目にすることも多いと思います。

中でも、特にインバウンド需要の増加により、和牛やとんかつ、焼き鳥などの日本の畜産品の国際的な人気は高まっています。

和牛人気の高まり
「WAGYU」として世界的ブランドが確立され、ミシュランレストランでの需要も急増しています。また、インバウンド観光客が「和牛体験」を求め、SNSで拡散し、さらなる需要拡大が見込まれます。

とんかつ文化の世界的評価
インバウンド観光客が日本でとんかつの美味しさに目覚めた結果、アジアを中心に日本のとんかつ専門店が広がり、日本産豚肉の品質評価も向上しています。
SNSを通じて視覚的な魅力が拡散され、さらなる需要増加が予測されます。

地鶏料理の魅力
国内各地の地鶏料理の魅力がインバウンド観光客の影響で再発見され、国産鶏肉の評価が高まっています。
宮崎の地鶏の炭火焼、チキン南蛮。
大分のから揚げ、とり天。
福岡の皮グルグル焼き鳥、水炊き

九州はまさに鶏料理の絶品が目白押しです。

皆さんどれを食べました。

代表的なブランド地鶏

比内地鶏(秋田県)

名古屋コーチン(愛知県)

軍鶏(全国)

しかし、こうした需要の増加にはいくつかの課題も伴います。
例えば、供給体制の脆弱性や品質管理体制の維持が今後の大きな課題も山積しています。

持続可能な畜産業への取り組み

畜産業が抱える課題を解決するためには、技術革新が不可欠です。

スマート畜産の推進
IoTやAIを活用し、畜産業の省力化と効率化が進んでいます。
リモートモニタリングシステムの導入により、生産現場のリアルタイムな管理が可能になりつつあります。

政策的支援の強化
後継者不足に対する政策的支援も重要です。
新規就農者向けの研修制度の充実や資金援助の拡充、技術支援体制の確立が求められています。
また、輸出促進策として、HACCP対応や国際認証の取得支援、さらにはブランド力強化の取り組みも進められています。

まとめ:未来への展望

日本の畜産業は、和食文化を支える重要な基盤であり、世界的な需要の増加に対応するためにも、持続可能な発展が求められます。後継者不足や環境問題といった構造的な課題はあるものの、技術革新と政策的支援が適切に組み合わさることで、これらの問題は解決可能です。

伝統的な生産技術の継承と革新的技術の融合、環境配慮型の生産システムへの移行、そして国際競争力の向上を図ることで、日本の畜産業はさらなる成長と持続可能な未来を実現することが可能になります。そのためには、畜産業に関わる全ての人々の努力が不可欠なのは当然です。