有機農業の未来を拓く!もみ殻リサイクル事業の可能性

近年、化学肥料や農薬の使用による環境負荷や食の安全への懸念から、有機農業への注目が高まっています。有機農業を推進するためには、化学肥料や農薬に代わる有機資材の利用が不可欠です。

そこで注目されるのが、稲作副産物である「もみ殻」の有効活用です。年間約200万トン発生するもみ殻は、従来は焼却処分されていましたが、近年では有機農業資材や産業資材としての活用が期待されています。

当社は2020年に、農業者としては国内初となる、商用としての「もみ殻シリカ生成事業」を開始し現在に至っています。

本記事では、3年に及ぶ、当社の実績を踏まえ、有機農業推進におけるもみ殻リサイクル事業の二つの形態、「もみ殻シリカ生成事業」と「もみ殻バイオ炭製造事業」について、それぞれの事業形態の課題を紹介しながらその可能性を探っていきます。

1. もみ殻シリカ生成事業:産業分野に大きな変革を及ぼす可能性

もみ殻シリカ生成事業は、もみ殻を燃焼させて生成される灰からシリカを取り出す事業です。シリカは、現在、ほとんどの産業分野で不可欠と言ってよいほどの資源であり、農業分野では、土壌改良材として、土壌の団粒化を促進し、保水性や通気性を向上させる効果があります。

メリット  農業分野

  • 土壌の物理性 : シリカは土壌の構造を改善し、作物の生育を促進します。
  • 病害虫の発生抑制 : シリカは作物を健康に保ち、病害虫の被害を軽減します。
  • 化学肥料の使用量削減 : シリカを土壌に添加することで、作物の栄養吸収効率が向上し、
                 化学肥料の必要量を減らせます。

課題

  • 事業規模の拡大 : もみ殻シリカ生成事業の規模を拡大するた効率的なプロセスと
    適切な施設が必要となります。
  • コスト削減 :  燃焼プロセスやシリカの抽出方法のコストを最小限に抑える必要があります。
  • 品質管理 : シリカの品質を一貫して高めるための品質管理体制が求められます。
           ※米の品質や成分、もみ殻の乾燥状態などにより、シリカの品質は大きく異なる。

シリカの産業用途

シリカは農業分野に限らず、多くの産業分野で重要な役割を果たしています。
今や産業で不可欠なシリコン半導体は、シリカを含む珪砂や水晶のケイ素の純度を高めたものから生成されています。
この様に現在産業分野で使われているシリカは鉱物由来がほとんどとなっています。
その鉱物由来のシリカをより安全や有機物であるもみ殻から抽出する取組が世界中で起こっています。

ここでは、その植物由来シリカ抽出の関して、近年研究開発が進んでいる分野をご紹介します。

  • タイヤ: 補強材として、タイヤの強度と耐摩耗性を向上
  • 強化セメント: コンクリートの強度と耐久性を高める
  • 遮熱材: 熱伝導率が低いため、建物の断熱材として活用
  • ガラス: ガラスの主要成分として、透明性と強度を向上

もみ殻から抽出されるシリカは、高純度で安全な資源として世界中で需要が高まっており、環境負荷が少ない点が大きなメリットです。もみ殻シリカ生成事業は、有機農業推進だけでなく、環境保全や地域活性化にも貢献できるポテンシャルを秘めています。

2. もみ殻バイオ炭製造事業:土壌改良効果、土壌肥沃度を高める

もみ殻バイオ炭製造事業は、もみ殻を炭化させてバイオ炭を製造する事業です。バイオ炭は、土壌に施用することで、有機物の分解を促進し、土壌肥沃度を向上させる効果があります。

フカフカな土壌
生物もビックリ!フカフカ土壌

メリット

  • 土壌肥沃度の向上 : 土壌の持続的な肥沃度を高め、作物の成長をサポート
  • 炭素貯留による地球温暖化対策 : 有機物を長期間保持し、土壌中の炭素を固定
      (j-クレジット制度)     これにより、地球温暖化の防止に寄与
  • 化学肥料の使用量削減 : バイオ炭を土壌に混入することで、作物の栄養供給を改善し、化学肥料の必要量を減らす
  • 水質浄化効果 : 水中の汚染物質を吸着し、水質を浄化する効果

課題

  • 技術開発 : 高品質なバイオ炭を効率的に製造するための技術開発
  • コスト削減 : 製造コストの低減するために効率的な方法を模索
  • 規格の策定 : バイオ炭の品質基準の策定、品質管理体制の構築

 駐)品質管理 : もみ殻シリカと同様に、もみ殻の成分や保管状況、燃焼の時間や温度管理などにより、
          採算されるバイオ炭の品質は大いに異なるため、関係団体で品質基準の策定が進行

未来への挑戦  島根県浜田市の取組

島根県浜田市では、農林水産省が進める有機農業推進と地域活性化を目的とした「オーガニックビレッジ構想」を推進しています。この構想の中で、有機質肥料の生産ともみ殻くん炭(バイオ炭)製造が重点的な役割を担っています。

  • 地域循環型堆肥の作成:野菜残渣や廃棄魚などを活用した有機質堆肥を作成し、生産者に提供
  • 籾殻くん炭の利用:有機栽培だけでなく慣行栽培にも導入し、温室効果ガスの削減と生産者の収益向上を目指す
  • オーガニックビレッジの啓発:イベント開催や情報発信を通じて、地域住民の理解と協力を得る

浜田市の取組 「オーガニックビレッジはまだプロジェクト」はこちらをクリックてご覧ください。

当社の取組  有機質肥料の製造(もみ殻バイオ炭+畜ふん堆肥の混合肥料)

当社では、2020年に「もみ殻シリカ生産事業」を開始以来、様ざまと試行錯誤を重ね、有機農業の改善強化を模索してきました。

その結果、国が策定した「みどりの食料システム戦略」で推奨する
(1)家畜排せつ物 (2)農業廃棄物(もみ殻等)を混合させたハイブリット肥料の製造を開始しています。

特徴

・佐賀県産米のもみ殻   : 佐賀県下の共同乾燥調製施設からもみ殻を回収
・安心、安全や豚ふん堆肥 : 自社養豚場内のプラントで自然発酵で生産された堆肥
・撒きやすく、保管しやすい形状 : ペレット状、袋入り ※ フレコン販売も可

2年前に豚ふん堆肥を撒きやすいようにペレット化を実施、それに合わせ、15㎏の袋詰め品を製造。
それまでは、粒状の堆肥を車上渡しでの販売が主流であり、顧客としては、大口農家が大半でした。

事例 紹介

福岡県で50町歩の稲作農家 

購入いただいた製品、数量 : シリカ配合豚ふん堆肥 60㌧

経緯 : 従来より減農薬栽培を手掛けていた。数年前までは、化学肥料を主に使い、土壌改良材として、ケイ酸カルシュームを使用。
動機 : 化学加工物の価格高騰や、国の有機農業の取組推奨などがあり、以前から豚ふん堆肥の導入は考えていた。しかし、広い農地では
     機械での施肥をできることが必須であり、よしいさんちの豚ふん堆肥がペレット化されたことが切っ掛けで2年前に導入した。
     シリカ配合豚ふん堆肥を導入したのは、シリカが含まれていることで。4それまで使っていたケイ酸カルシュームが必要なくなり、
     手間も費用も削減できるから。

結果 : 豚ふん堆肥に変えたところ、米の発育が早く、倒伏米も少なく、何より、収量がアップ

楽々!

汗をかきながら

感想 : 稲作にとって土壌のケイ素は不可欠な成分であり、ケイ素不足が収穫量に大きく影響する。
     今回の「シリカ配合豚ふん堆肥」は、バイオ炭に含まれるシリカ(ケイ素)の土壌改良効果と、豚ふん堆肥に含まれる豊富な肥料要が
     相まって、ダブルの効果を得ることを実感しました。そのほかにも、バイオ炭(燻炭)には害虫忌避効果などもありました。
     これから、広がることが期待される有機農業にとって、このハイブリットな肥料は不可欠なものになると思います。

まとめ

如何だったでしょうか。

もみ殻リサイクル事業は、有機農業推進だけでなく、環境保全や地域活性化にも貢献できる可能性を秘めていることをご紹介しました。課題を克服し、事業を展開していくためには、技術開発や政策支援、そして地域住民の理解と協力が不可欠であることは明白です。

有機農業の未来を拓く鍵となるもみ殻リサイクル事業の今後の発展に期待が高まります。