「有機質肥料が要=化学肥料依存の低減」 なぜ今、有機農業の普及拡大が必要なのかを考察!

皆さんこんにちは、当ブログの管理人です。
九州は毎日酷暑が続き、人間だけでなく、生物全般がグロッキー状態です。
野菜の価格も高騰が続き市民生活に影響を与えています。
今回は生鮮食料の価格高騰の実態と今後の見通しや対応策等をご紹介していしますので、
最後までお読みいただけると嬉しい限りです。
はじめに
コロナ後、戦争、国際情勢から考える「肥料の食料安全保障」
私たちが毎日食べている米、野菜、果物。
その農産物を安定して生産するためには、肥料が欠かせません。
ところが現在、その肥料を取り巻く環境が大きく変わっています。
その状況は、次に通りです。
新型コロナウイルス感染症の流行を経て、世界の物流やエネルギー市場が混乱。
さらに2021年以降、肥料原料の価格が上昇。
2022年にはロシアによるウクライナ侵略が重なりました。
そして2026年には中東情勢の悪化が肥料市場に新たな影響を与えています。
肥料価格の問題は「一度高くなって、いずれ元に戻る」という単純な問題ではなくなっているのです。
価格の推移 : 2023年には肥料価格が1.55倍に
農林水産省の「農業物価統計」によると、
農業経営体が購入する肥料の小売価格指数は、
2020年平均を100とした場合、2023年4月に155.3まで上昇。
これは、2020年と比較して約55%高い水準です。
その後は価格が低下し、2024年には130台後半まで下がりました。
しかし、2025年には再び緩やかな上昇に転じ、2026年6月には146.3となっています。
つまり、肥料価格はピーク時から下がったものの、以前の安い時代には戻っていない状態。 (農林水産省)
農業者から見れば、これは非常に大きな問題です。
肥料は、種苗や農薬、燃料などと違い、「使わない」という選択が簡単にはできません。
特に窒素、リン、カリは作物の生育に欠かせない重要な養分です。
そのため、肥料価格の上昇は、そのまま農家の生産コスト上昇につながります。
日本の肥料は海外情勢に弱い
さらに重要なのが、日本の肥料原料の輸入依存です。
農林水産省によれば、日本は主要な肥料原料である尿素、りん酸アンモニウム、塩化加里のほとんどを海外から輸入しています。
過去の農林水産省資料では、尿素は約95~96%、りん酸アンモニウムと塩化加里はほぼ全量を輸入に依存しているとされています。 (農林水産省)
ここに日本の大きな弱点があります。
例えば、日本国内で異常気象が起きなくても、海外で戦争が発生したり、輸出国が輸出制限を行ったり、海上輸送が滞ったり、為替が大きく変動したりすれば、日本の肥料価格が上昇する可能性があります。
実際に農林水産省は、2021年秋以降、中国による肥料原料の輸出検査の厳格化や、ロシアによるウクライナ侵略などによって、肥料原料の輸入が円滑に進まなくなったと説明しています。 (農林水産省)
つまり、日本の農業は、国内の天候だけでなく、海外の政治・戦争・物流・為替まで肥料価格を通して影響を受ける構造になっている状態なのです。
推移 : 2026年、再び始まった肥料原料の上昇

そして2026年、この問題が再び表面化しています。
農林水産省の資料によると、2026年1月の尿素の輸入通関価格は7万7,300円/tでしたが、
4月には12万9,700円、5月には14万1,400円/tまで上昇しました。
6月には11万9,700円/tまで下がりましたが、依然として高い水準です。 (農林水産省)
背景には、中東情勢の悪化があります。
2026年の中東の紛争によってホルムズ海峡を通る物流が大きな影響を受け、世界の肥料市場では尿素やリン系肥料の価格が急上昇しました。WTOも、2026年4月に世界の尿素価格が大きく上昇し、その後6月に低下したことを報告しています。 (世界貿易機関)
日本政府も、中東情勢がエネルギー価格や農業資材価格を通じて農業・食料供給に直接影響しているとしています。 (農林水産省)
価格上昇は農家だけの問題ではない
「肥料が高くなった」と聞くと、農家の経営問題だと思われがちです。
しかし、本当はそれだけではありません。
農業経営のコストが上がれば、農産物価格にも影響します。
肥料価格が高騰し続ければ、生産者は肥料を減らす、作付けを変更する、栽培面積を縮小するなどの対応を迫られる可能性があります。
さらに、海外から肥料を安定的に買えなくなれば、農産物そのものの生産量に影響する可能性があります。
農林水産省が肥料を「食料安全保障」の問題として捉えているのは、このためです。 (農林水産省)
重要になるのが「国内にある資源」

ここから、有機農業や有機質肥料の重要性を紹介していきます。
家畜ふん尿、下水汚泥、食品残さ、農業残さなど、
日本国内には肥料として活用できる有機物資源が多数存在します。
これらを適切に処理し、堆肥や肥料として農地に戻すことができれば、海外から輸入する肥料原料への依存を減らすことができます。
実際、農林水産省は、輸入原料への過度な依存から転換するため、家畜排せつ物や下水汚泥などの国内資源を肥料として利用する取組を進めています。 (農林水産省)
また、農林水産省の資料では、2021年秋以降に化学肥料原料が大きく値上がりした一方、国内資源を原料とする肥料は大幅な価格上昇が見られなかったことも示されています。 (農林水産省)
これは非常に重要なポイントです。
国内資源を循環利用することは、環境対策であると同時に、肥料価格と食料供給を守る経済・安全保障対策でもあるのです。
「有機農業=肥料価格問題のすべてを解決する」わけではない
ここは注意が必要です。
有機農業を広げれば、すべての肥料を国内資源だけでまかなえるという意味ではありません。
有機質肥料にも、収集、運搬、発酵、乾燥、ペレット化などのコストがかかります。また、国内資源だけでは作物が必要とする養分量を完全に供給できない場合もあります。
つまり、現実的な方向は、化学肥料を一気にゼロにすることではありません。
土壌診断を行い、必要な量を適切に施肥しながら、堆肥や有機質肥料などの国内資源を組み合わせ、輸入肥料への依存を少しずつ減らしていくことです。
有機農業と有機質肥料の利用は、この大きな転換の一部として考える必要があります。
日本政府も「化学肥料依存の低減」を目標
農林水産省の「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量を30%低減するとともに、有機農業の取組面積を耕地面積の25%、100万haまで拡大する目標が掲げられています。 (農林水産省)
これは、有機農業を単なる「環境に良い農法」としてではなく、将来の農業生産システムそのものを変える取組として位置づけていると考えることができます。
これから必要なのは「地域で資源を回す農業」

これからの農業で重要になるキーワードは「循環」です。
畜産農家から出る家畜ふん尿を堆肥にする。
食品工場から出る残さを肥料資源として利用する。
農業から出る籾殻などを土壌改良資材として活用する。
地域で発生した資源を地域の農地に戻す。
こうした仕組みができれば、肥料を「海外から買うもの」だけではなく、「地域で生み出すもの」として捉えることができます。
これは有機農業の普及にもつながります。
まとめ
コロナ後の世界では、物流の混乱、エネルギー価格の変動、ウクライナ戦争、中東情勢など、農業とは一見関係がないように見える出来事が、肥料価格を通して農業経営を直撃するようになりました。
2023年4月には国内肥料価格指数が155.3まで上昇し、2026年6月でも146.3と、2020年平均を46.3%上回っています。さらに2026年には尿素の輸入価格が再び大きく上昇しました。 (農林水産省)
だからこそ、これからの日本農業では、
「海外から買う肥料に依存する農業」から、
「国内にある資源を循環して利用する農業」へ
少しずつ転換していくことが重要です。
有機農業の普及拡大は、環境保全だけを目的としたものではありません。
それは、肥料価格の高騰、資源の海外依存、農業経営の不安定化、そして将来の食料安全保障に対応するための重要な農業政策・地域戦略でもあります。
「有機農業を広げること」は、単に農薬や化学肥料を減らすことではありません。
地域にある資源を肥料として生かし、土を守り、農業を海外情勢に左右されにくい産業へ変えていくこと。
それこそが、これからの日本農業に求められている「有機農業の新しい役割」ではないでしょうか。
数値についての注意
今回の資料では、最新性を優先して2026年6月までの公表値を使用しました。2026年7月以降の国内肥料小売価格指数は、現時点で農林水産省が公表している今回確認可能なデータにはまだ掲載されていません。したがって、7月以降の国内小売価格については推測していません。 (農林水産省)
また、「イラン紛争によって日本の肥料価格が何%上昇した」といった因果関係を日本国内の小売価格だけから正確に切り分けることはできません。今回の記事では、農林水産省が示す輸入原料価格、中東情勢、国内肥料価格の動きを組み合わせて説明しています。

