循環型農業へのシフト:価格高騰に負けない持続可能な営農戦略

こんにちは。本ブログの管理人です。
本日は、農家の経営に直結するテーマになります。
読み終わったときには、凝り固まった頭が柔らかくなりますから、
最後まで読んでいただければ嬉しい限りです。
目次
はじめに
近年、肥料や飼料の価格高騰が農家の経営を圧迫しています。
国際情勢の不安定化や原材料の供給不足により、これらの資材コストは上昇の一途をたどっています。
この状況下で、農家が持続可能な経営を行うためには、新たなアプローチが必要です。
循環型農業は、資源の効率的利用と廃棄物の最小化を通じて、外部からの投入を減らし、自然の循環を活用する農業方式です。
本記事では当社が長年取り組んできた堆肥つくりなどの実例の紹介も交えて、
この循環型農業への移行が、いかに価格高騰に対する有効な対策となるかを探ります。
1. 循環型農業の基本原則
資源の効率的利用
循環型農業では、農場内の全ての資源を最大限に活用します。
例えば、作物残渣や家畜糞尿を堆肥化し、土壌改良材として再利用します。
これにより、外部から購入する肥料の量を減らし、コスト削減につなげることができます。
当社養豚場でも、毎日大量に出る豚ふんを自然発酵のコンポストで有機質堆肥を作っています。
廃棄物の最小化と再利用
従来は廃棄物とされていたものを、有用な資源として捉え直します。
例えば、稲わらを家畜の敷料として使用し、その後堆肥化するなど、
複数回の利用を通じて廃棄物を最小限に抑えることなどがあげられます。
生態系サービスの活用
自然の持つ力を積極的に活用します。
例えば、害虫の天敵を誘引する植物を栽培することで、農薬の使用量を減らす。
また、土壌微生物の働きを促進し、植物の養分吸収を助けることで、肥料の効率を高めることが可能です。
2. 肥料コスト削減のための循環型アプローチ
堆肥の自家生産と利用

作物残渣や家畜糞尿を活用した堆肥の自家生産は、肥料コスト削減の要となります。適切な堆肥化技術を習得し、質の高い有機肥料を生産することで、化学肥料への依存度を大幅に下げることができます。
緑肥作物の導入

レンゲやクローバーなどの緑肥作物を輪作に取り入れることで、土壌の肥沃度を高めることができます。
これらの作物は大気中の窒素を固定し、土壌に有機物を供給。
結果として、化学肥料の使用量を減らすことが可能になります。
ただし、減肥可能量は緑肥の種類やすき込み時期によって異なるので調べてから施肥するように注意してください。
バイオ炭の活用
バイオ炭(燻炭)は、有機物を酸素のない状態で350℃超の温度で加熱して作られる炭素豊富な物質です。
土壌に混ぜることで、土壌の保水性と養分保持能力が向上し、肥料の利用効率が高まります。
また、長期的な炭素貯留効果もあります。
ただし、効果の程度や条件については、個々の状況によって異なる可能性があることに注意が必要です。
当社でももみ殻燻炭を生成していますが、もみ殻によって成分が異なることがあり、
できる限り頻繁に成分分析を行っています。
3. 飼料コスト削減のための循環型戦略
畜産農家や家畜を飼われている方の限定になりますが、
以下の取組も効果が大きく見込めます。
飼料用作物の自家栽培
飼料用のトウモロコシやイネ科牧草を自家栽培することで、購入飼料への依存度を下げることができます。
土地の有効利用と適切な栽培管理により、質の高い飼料を安定的に確保することが可能です。
食品残渣の飼料化
地域の食品加工業者や小売店と連携し、食品残渣を飼料として活用する取り組みも有効です。
適切な処理と栄養管理を行うことで、安全で栄養価の高い飼料を低コストで確保できます。
放牧システムの導入
可能な場合、放牧システムの導入を検討します。
放牧は家畜に自然な採食行動を促し、購入飼料の量を減らすことができます。
また、適切な放牧管理は草地の生産性向上にもつながり一石二鳥の効果が期待できます。
4. エネルギー自給による経営安定化
バイオガスプラントの導入
家畜糞尿や食品残渣を利用したバイオガスプラントは、メタンガスを生成し発電に利用できます。
これにより、農場のエネルギーコストを削減するとともに、発酵後の残渣を高品質な有機肥料として利用することが可能です。
太陽光発電の活用
農地や畜舎の屋根を利用した太陽光発電システムの導入は、電力コストの削減に大きく貢献します。
初期投資は必要ですが、長期的には安定した電力供給とコスト削減効果が期待できます。
風力発電の可能性
立地条件が適している場合、小型風力発電機の導入も検討に値します。
特に、夜間や曇天時にも発電が可能な点が太陽光発電を補完します。
ただし、周辺環境への影響評価は慎重に行う必要があります。
5. 水資源の効率的利用
雨水貯留
雨水を貯留し、灌漑用水として活用するシステムを構築します。
これにより、水道水の使用量を減らし、コスト削減につながります。
また、貯水タンクを高所に設置することで、重力を利用した配水も可能になります。
灌漑システムの最適化
点滴灌漑や地中灌漑など、水の無駄を最小限に抑える灌漑方法を導入します。
また、土壌水分センサーを利用した精密な水管理により、作物の必要に応じた適切な灌水が可能になり、
水資源の効率的利用につながります。
水耕栽培の検討
一部の作物については、水耕栽培の導入を検討する価値があります。
水耕栽培は土壌を使用しないため、水と肥料の使用量を大幅に削減できます。
また、環境制御が容易なため、高品質な作物の安定生産が可能になります。
ただし、
水耕栽培は多くの利点がある一方で、導入にあたっては適切な計画と管理が必要です。
初期投資を抑えつつ、段階的に導入していくことをお勧めします。
また、栽培する作物の選定や市場ニーズの調査も重要です。
成功事例や専門家のアドバイスを参考にしながら、慎重に検討を進めていくことが大切です。
6. 循環型農業へのシフトに伴う課題と解決策
初期投資の問題と補助金活用
循環型農業への移行には、設備投資が必要な場合があります。
この課題に対しては、国や自治体の補助金制度を積極的に活用することが重要です。
また、段階的な導入計画を立て、投資負担を分散させる方法も検討しましょう。
技術習得の必要性と研修機会
新たな農法や技術の導入には、学習と実践が欠かせません。
農業改良普及センターや先進農家との連携、オンライン講座の活用など、積極的に学習の機会を設けることが重要です。
また、同じ志を持つ農家同士のネットワークづくりも有効です。
法規制への対応
循環型農業の実践にあたっては、廃棄物処理法や肥料取締法など、関連する法規制に注意が必要です。
地域の農業委員会や専門家に相談し、法令遵守を徹底することが重要です。
場合によっては、規制緩和を求める働きかけも検討しましょう。
7. 成功事例の紹介
国内外の循環型農業実践農家の例
日本国内では、畜産と稲作を組み合わせた資源循環型農業を実践し、肥料コストを大幅に削減した事例があります。
また、欧州では、バイオガスプラントを中心とした地域循環型農業モデルが成功を収めています。
具体的な成果と学びのポイント
これらの成功事例に共通するのは、長期的視点と地域との連携です。
初期の困難を乗り越え、5年、10年という単位で成果を追求しています。
また、単一農家だけでなく、地域全体で循環の輪を作ることで、より大きな効果を生み出しています。
まとめ
循環型農業へのシフトは、肥料・飼料価格高騰への対策として非常に有効です。
資源の効率的利用、廃棄物の最小化、生態系サービスの活用を通じて、外部からの投入を減らし、
自然の循環を最大限に活用することができます。
初期投資や技術習得など、課題はありますが、長期的には経営の安定化と環境保全の両立が可能になります。
一朝一夕には実現できませんが、段階的な導入と継続的な改善を通じて、持続可能な農業経営を実現しましょう。